40度も超えることもあった今年の猛暑も、やっと終わりを告げて、日本列島にもようやく涼しい秋がやってきた。
台風24号が房総半島にも猛威をふるって、真夜中に強風が吹き荒れた翌日は青い空が広がった。なし街道の大町から自然観察園を歩いて、台風後の草木の痛み具合と、秋の気配を感じに歩きまわった。
ナシの販売所には、新高に並んで、「陽水」「王秋」の名前が目についた。あれ、初めてだ。食べたことない! 晩生の新高は猛暑に弱く、ヤケドしたように茶色になって落下することもあるとか。新しい品種は、どんな特徴を持っているのだろう。生産者にとって、消費者にとってのメリットは? 大きなナシ屋さんの店内に、品種の交配親・家系図みたいのが壁に貼ってあったのでお話を聞く。
「私がここに嫁いで来た頃は・・・」、さすがに詳しく、石井早生のこと、長年の品種の移り変りなどのお話を聞くことができた。それは何年前のこと? 一見若い奥さんだが、やはり気がひけて年齢を聞くのがはばかられた。
昔の果物には、独特の香りがあったのに、最近は野菜も果物も、柔らかくて甘いばかりで・・・などとも。もう半世紀も前のことだが、「近頃は大きくて甘いリンゴばかりが増えて、ウチは小人数だし、アップルパイが作れないリンゴばかり」という苦情が消費者から出た。それをまに受けて、青森県で紅玉をたくさん作ったのだが、殆ど売れずに大量の紅玉を捨てることになった、という話を聞いたことがある。
気軽に、思いつきで意見を言ってしまうのだけれど、どこの家庭でも、そんな頻繁にアップルパイを作って食べるわけではないのだから。
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9月26日、県の環境講座で「風力発電とソーラーシェアリング」の施設見学に参加した。行事を主催したのは、環境パートナーシップちば。噂程度には自然エネルギーの話題を聞いているのだけれど、この領域、そんなに詳しいわけではない。でも、農業とエネルギーの未来を考えようというキャッチフレーズは、すごく魅力的だ。
幕張で毎年10月に開催されるエコメッセで、このシステムの話をちょっとだけお聞きしたことがあった。風力発電については、2011年7月に環境教育学会の大会が青森大学を会場に開催された時に、まじかで見学したことがあった。近くで見上げる風車は、恐ろしくデカイ。風の音が不気味なほど。
今回はそうした施設を、バスで現地を案内してくれ、このプロジェクトの実施にかかわった大勢の人たちから直接お話しを聞けるなど、絶好の勉強チャンスというわけである。
まずは、銚子沖の着床式洋上風力発電の実証実験を遠くから眺めることから始まった。ヨーロッパでは1990年代から導入が始められたが、日本では台風による暴風や地震・津波など厳しい自然環境が続発するため、苦労が絶えなかったらしい。洋上に建つタワーの高さは126m、風車の直径は92mもあるという。
匝瑳市のメガソーラーシェアリングは、2017年に第一発電所が完成した。落成式には、小泉純一郎・細川・菅直人の歴代3首相が派閥の垣根を超えて列席したことでも知られる。
ここは、ソーラーシェアリングとしては日本最大規模となる1メガワットの太陽発電所で、ざっと一般家庭300所帯の年間電力消費量をまかなうことができるのだそうだ。
ここのソーラーのユニークさは、幅が30cmほどの細いパネルを並べてあること。つまり、太陽光の3分の2はパネル下3mの農作物に光が当たるように作られている。日陰ができても作物は育つ? 光合成の光飽和点についても多種類の作物について調査を重ね、遮光率35%ならば殆どの作物は問題なく元気に成長するとのことだ。
隙間をあけたソーラーが高い位置にあるため、その下にトラクターを入れることもできる。夏場の農作業がとても楽、真夏でも涼しい風が吹く。放射冷却が減少し、雪解けが早く、霜もおりにくいというプラス面もあるらしい。
この場所は、耕作放棄で農業が続けられず荒地になってしまった場所の活用を、ソーラーと組み合わせることで豊かな農地をよみがえらせようという試みで始められた。何人もの専門技術を持つスタッフが力を合わせて地元とつなげ、情報面での協力や資金調達など苦労を積み重ねていることを、現場を歩きお話を聞いて実感することができた。
いま、ソーラーパネルの下にはダイズが育っている。農業法人は2016年に設立され、直接農作業にかかわるメンバーは、32歳から67歳までの6人ぐらいか。長年にわたり有機農業を続けてきたベテランや、新規就農者などと多彩。収穫したダイズからの味噌作り・醤油つくりなども含め、今年は11月18日に都市と農村の交流をテーマに収穫祭の開催が予定されているという。