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第96回 11月(霜月)イヌサフランの花


イヌサフランの花

ナシ畑や霊園もある市川大野駅に近い道端の草むらで、イヌサフランのピンクの花を10月に今年も見つけた。

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毎年何回かは歩いている場所で、ナシの新高が収穫期を迎える晩秋に、突然のように咲き出している。花の時期にはヒガンバナと同じように葉がない。誰かが畑の縁に球根を植え付けたものらしい。野草の茂みの中なので、すごく目立つ。

イヌサフランは、属名がコルチカム。半世紀以上も前、種無しスイカを作るのには、この植物から取り出されるコルヒチンによって作り出された。通常の細胞分裂を阻害して倍数体を作り出す働きがある。作られた4倍体の花に、普通の2倍体のスイカの花粉を付けると3倍体スイカができる。これが種無しの秘密の仕掛け。

4倍体にすると大きくなるものが出てくる。カーネーションなども大型の花になる! 大きいことはいいことだ!と、倍数体を作れば立派になっていいことづくめ、と思われたのだが、自然界はそんなに簡単なことではないとわかって、いつの間にかブームは消えてしまった。

このコルチカムは、花の咲く時と葉が出る季節とが半年ずれる。机の上に球根をころがして置いといても花が咲くという不思議な植物である。

そんな習性を持つのだが、古くは通風の薬などとしても利用されていた。しかし、毒と薬は紙一重、多量に服用すれば免疫機能が低下し腎臓障害やひどい下痢など、かなり危険を伴う薬であるらしい。

長いメシベは濃い赤紫でオシベの葯は黄色、オシベが3本ということはアヤメ科の証拠で、花壇の春を飾るクロッカスや、薬用にするサフランとは花の形はそっくりだけれど、6本のオシベを持っているからユリ科というわけで、他人のそら似。分類は紛らわしいことになってしまう。

まだ枯れた球根(正しくは鱗茎)から、葉は出てこないので、参考のためにイラストには薬用植物で無毒のサフランを描き添えることにした。右下の写真は、昨年のイヌサフランの花の終わり頃のもの。



# by midori-kai | 2018-11-14 20:28

北西部の天然記念物をめぐる、そして大洲の市民まつり   高 野 史 郎

昔は二百十日などという台風を呼ぶ言葉があった。立春から数えて210日目で、いまの91日にあたる。この頃が台風来襲の時期だったそうだが、今は何回も超大型がやってくる。10月の24号・25号では各地にひどい被害をもたらした。雨が少ない風台風だったので、塩分多量の風が、葉っぱにべったり、茶色になって葉が枯れた木々も多かった。大町のナシ農家もこの被害にあって、ナシの花の狂い咲きも見られたという。

どんな場所の、何の木の葉が茶色になったか? 市川各地から浦安の海岸の方まで見て回った。やはり、落葉樹のケヤキ、サクラ、プラタナスなどの被害が大きかったようだ。35年ぐらい前だったか、降水量が少ない風台風で、潮風に強いタブノキの葉までが茶色になっているのに驚いた記憶がある。それにしても、砂浜に咲くハマヒルガオなどの海浜植物が、吹きさらしの場所で育っているのだから逞しい。

狂い咲きのメカニズムはざっと次の通り。多くの落葉樹などでは、来年の花芽や葉芽は7月頃から準備に入る。早とちりしないように、葉では抑制作用があるアブシシン酸と呼ばれる植物ホルモンを分泌して、冬芽が完成され越冬準備になるまで待ったをかけている。ところが、ブレーキ役の葉っぱが落ちて、タガが外れてしまった!というわけ。

しばらく市川の北西部に出かけていないので、北総線の北国分駅から歩き始めることにした。まずは市川市の天然記念物のハリギリがある伊弉諾(イザナギ)神社。駅からもかすかに見える枝先が元気なさそうな気配。近づいて見上げてビックリした。かなり枯れこんでいるのだ。1979(昭和54)年の指定当時は、胸高幹周が2.62mだったが、もう3mを超している。幹が太くはなったが、枝先は少なく衰退が目立つ。根元の周囲は針金で囲ってあるのだが、ここが落ち葉の捨て場になって30cmにもなっているのがやはり気になる。根が呼吸困難になっていなければいいのだが。

西側の通りに戻って、歴史博物館や堀之内貝塚に向かう道路にはポプラみたいな樹形のムサシノケヤキが南に向かって並木になっている。木の葉もかなり痛んでいる。

この地域には天然記念物が集まっているのだから、そこをつなげて歩く気になって、細い道を何回も曲がって禅照庵へ。ここには、県内最大級といわれるラカンマキが元気に葉を茂らせていた。ここから裏山にかけては、自然状態に近い感じで茂っている樹林地が残されている。シロダモ、ヤブツバキ、ケヤキなど。このラカンマキは小型ながら300年を超すのではないかと、いまは亡き岡﨑清孝さんと話し合った記憶がある。

ここから西南に向かって、外環を通り越した通路沿いにある愛宕神社は、二本並んだイチョウがやはり市の天然記念物で、1983(昭和58)年の指定。二株の間が2m弱で、この根元の間を踏みつけるように歩いて奥の愛宕神社に向かうことになるのがちょっと痛ましい。奥までは細い参道が続きクヌギの並木があるのだが、民家に日陰を作るのでぶっつりと胴切りされている。今は住宅地が込み合うせまい敷地で、緑をどう残したらいいのか、つらい選択を迫られる課題となっているのも実感しよう!

ところで、市川市民のどのくらいの人がこれらの天然記念物のこと、気づいているのかなと気になってきた。葛飾八幡宮の千本公孫樹はよく知られている。が、その他は殆ど知られていないのでは? 役所のどこが管轄しているのだろう。簡潔な解説が欲しいとずっと思い続けているのだが。

113日には、大洲防災公園で恒例の市民まつり。大変な賑わい。市川みどり会では「この葉っぱは何の木?」のクイズ。テントの天井に風船がたくさん!つっかえた状態で並んでいる。この風船欲しさに家族連れの行列ができていた。

箱の中にパウチされた葉が詰まっていて、10種類ぐらいの一覧表から何の木だか当てるもの。これを機会に近くの林へ出かけて、実物を確かめに林へ出かける人が大勢現れてくれるとうれしいのだが、残念ながら風船を貰って終わりの人が殆どなのだろうな!

ともかくこれだけ大勢の人で賑わっては、防災公園の樹木にとっては根元を踏み固められて災難なことだ。ここの樹木の塩害はどうなのだろうと気になって、隅々まで調べまわった。

ケヤキはやっぱり全体の葉が茶色になっていた。10mぐらいありそうな背が高いポプラは、風当たりが強い南側がやはり茶色になっていた。左奥にはバラ園があって、ここには市川駅南口のロータリーと同じくマメナシが植えてあるのに気がついている人、殆どいないのでは。

何とこのマメナシ丸い葉もかなり痛んでいて、先端が特にひどい。ここでもナシの花の狂い咲きが10輪ほど見られた!




# by midori-kai | 2018-11-14 20:20

第95回 10月(神無月)フジバカマとヨウシュヤマゴボウ

フジバカマとヨウシュヤマゴボウ

秋も深まるにつれて、きれいな色の実をつけた野草も多くなる。甘い匂いがしたクズの花も終わりに近づき、エダマメみたいな莢に変わる。里見公園西側の旧坂川の流れ沿いのフジバカマの里には、9月頃からフジバカマの淡い赤紫のツボミが花を開き、キンミズヒキやヤブマメなどといっしょに小さな花園をあちこちに作っていた。センニンソウの白い十字型の花は、実は花びらではなく萼で、分類的にはクレマチスの仲間。風に乗ってタネが飛ばされる仕組みも、眺めていると楽しい。

もう、かつての坂川に江戸川からの水が流れ込み、小さな入り江が貴重な植物の生育や魚たちの産卵場所にもなっていたことを知る人も少なくなってしまった。フジバカマは地下茎を伸ばして結構丈夫な草なのだが、この花が好む川辺の湿地がコンクリートで固められるとともに、各地で絶滅状態になってしまった。今年の夏は酷暑続きで、真夏の間は土手の土も乾燥しきって元気がなかった。

ところで、フジバカマの花をルーペで覗いた方はいらっしゃるだろうか? キク科の植物だから、タンポポと同じように頭状花序で、小さな筒状の苞の中を覗くと、5つほどの花が順に咲き出していくのが見られる。開花が進むにつれて、白っぽくなり、やがて薄茶色になって風に揺れる。

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古い時代の中国では、それを頭に飾ったり、お風呂に入れたりして、クマリンの香りを楽しんだという。桜餅と同じ匂い。日本書紀に登場するアララギは、このフジバカマのことだろうといわれる。「本草和名」には「布知波加末」の漢字を当てている。フジバカマは、古い時代に薬用として日本に伝わったのだろうとされている。

もう一つは、ヨウシュヤマゴボウ。北アメリカ原産の大型の多年草で、花が終わると濃い赤紫の実が垂れ下がっているのが目立つから誰でも知っている。

茎も赤く、実をつぶすとワインカラーの色水ができる。アメリカではインクベリーの名前もある。実際にワインの着色に使われたこともあったらしいが、有毒なので注意したい。しかし、若葉をよく茹でて何回もゆで流してから、食用にしている国もあるというから世界は広い。

イラストの右上の赤紫は、この実をつぶした状態。空気にさらして、これから先、どう変色するのか観察することにした。



# by midori-kai | 2018-11-01 15:48

大町梨街道を歩く, メガソーラーシェアリングの見学  高 野 史 郎

40度も超えることもあった今年の猛暑も、やっと終わりを告げて、日本列島にもようやく涼しい秋がやってきた。

 台風24号が房総半島にも猛威をふるって、真夜中に強風が吹き荒れた翌日は青い空が広がった。なし街道の大町から自然観察園を歩いて、台風後の草木の痛み具合と、秋の気配を感じに歩きまわった。

ナシの販売所には、新高に並んで、「陽水」「王秋」の名前が目についた。あれ、初めてだ。食べたことない! 晩生の新高は猛暑に弱く、ヤケドしたように茶色になって落下することもあるとか。新しい品種は、どんな特徴を持っているのだろう。生産者にとって、消費者にとってのメリットは? 大きなナシ屋さんの店内に、品種の交配親・家系図みたいのが壁に貼ってあったのでお話を聞く。

「私がここに嫁いで来た頃は・・・」、さすがに詳しく、石井早生のこと、長年の品種の移り変りなどのお話を聞くことができた。それは何年前のこと? 一見若い奥さんだが、やはり気がひけて年齢を聞くのがはばかられた。

 昔の果物には、独特の香りがあったのに、最近は野菜も果物も、柔らかくて甘いばかりで・・・などとも。もう半世紀も前のことだが、「近頃は大きくて甘いリンゴばかりが増えて、ウチは小人数だし、アップルパイが作れないリンゴばかり」という苦情が消費者から出た。それをまに受けて、青森県で紅玉をたくさん作ったのだが、殆ど売れずに大量の紅玉を捨てることになった、という話を聞いたことがある。

気軽に、思いつきで意見を言ってしまうのだけれど、どこの家庭でも、そんな頻繁にアップルパイを作って食べるわけではないのだから。

 926日、県の環境講座で「風力発電とソーラーシェアリング」の施設見学に参加した。行事を主催したのは、環境パートナーシップちば。噂程度には自然エネルギーの話題を聞いているのだけれど、この領域、そんなに詳しいわけではない。でも、農業とエネルギーの未来を考えようというキャッチフレーズは、すごく魅力的だ。

 幕張で毎年10月に開催されるエコメッセで、このシステムの話をちょっとだけお聞きしたことがあった。風力発電については、20117月に環境教育学会の大会が青森大学を会場に開催された時に、まじかで見学したことがあった。近くで見上げる風車は、恐ろしくデカイ。風の音が不気味なほど。

今回はそうした施設を、バスで現地を案内してくれ、このプロジェクトの実施にかかわった大勢の人たちから直接お話しを聞けるなど、絶好の勉強チャンスというわけである。

まずは、銚子沖の着床式洋上風力発電の実証実験を遠くから眺めることから始まった。ヨーロッパでは1990年代から導入が始められたが、日本では台風による暴風や地震・津波など厳しい自然環境が続発するため、苦労が絶えなかったらしい。洋上に建つタワーの高さは126m、風車の直径は92mもあるという。

匝瑳市のメガソーラーシェアリングは、2017年に第一発電所が完成した。落成式には、小泉純一郎・細川・菅直人の歴代3首相が派閥の垣根を超えて列席したことでも知られる。

ここは、ソーラーシェアリングとしては日本最大規模となる1メガワットの太陽発電所で、ざっと一般家庭300所帯の年間電力消費量をまかなうことができるのだそうだ。

ここのソーラーのユニークさは、幅が30cmほどの細いパネルを並べてあること。つまり、太陽光の3分の2はパネル下3mの農作物に光が当たるように作られている。日陰ができても作物は育つ? 光合成の光飽和点についても多種類の作物について調査を重ね、遮光率35%ならば殆どの作物は問題なく元気に成長するとのことだ。

隙間をあけたソーラーが高い位置にあるため、その下にトラクターを入れることもできる。夏場の農作業がとても楽、真夏でも涼しい風が吹く。放射冷却が減少し、雪解けが早く、霜もおりにくいというプラス面もあるらしい。

この場所は、耕作放棄で農業が続けられず荒地になってしまった場所の活用を、ソーラーと組み合わせることで豊かな農地をよみがえらせようという試みで始められた。何人もの専門技術を持つスタッフが力を合わせて地元とつなげ、情報面での協力や資金調達など苦労を積み重ねていることを、現場を歩きお話を聞いて実感することができた。

いま、ソーラーパネルの下にはダイズが育っている。農業法人は2016年に設立され、直接農作業にかかわるメンバーは、32歳から67歳までの6人ぐらいか。長年にわたり有機農業を続けてきたベテランや、新規就農者などと多彩。収穫したダイズからの味噌作り・醤油つくりなども含め、今年は1118日に都市と農村の交流をテーマに収穫祭の開催が予定されているという。





# by midori-kai | 2018-11-01 15:43

第94回 9月(夜長月)スズランの実とカラスウリの茎


8月末に、北総線大町駅から自然観察園北側入り口あたりをのんびりと散策しました。ナシ農家の店先は、お客さんとの対応や発送で忙しそうです。今年の異常気象が、ナシの生育にどんな影響を与えたのだろうかと気がかりです。

農家の生垣の植え込みの下に、オレンジ色の実をつけたスズランを見つけた! 根っこはどうなっている? 

第94回 9月(夜長月)スズランの実とカラスウリの茎_b0199122_15200706.jpg
                 スズランの実とカラスウリの茎

ソーッと引っ張ったら、根が抜けてしまって驚いた。土寄せか何かの作業で、柔らかい土の部分だったのだろうか? スズランの地下茎は横に伸びると思っていたのに、ここでは真下に伸びていた。そこに横筋の多い部分があるのに気づく。地際スレスレには今年の新しそうな白い根が生えていて、そのすぐ下には1年前かもしれない黒い根が何本も見える。

冬でも葉っぱは枯れずに残っているが、古くなった部分は順次枯れこんで、おそらくは次々と新しい組織に切り替えて生き続けるのだろう。横に伸びた地下茎の先端に、来春の花を咲かせる芽が伸びるのだろうけれど、ここでは千切れてしまった。

自然観察園を真下に見る境界のフェンスには、カラスウリの茎が伸びていた。何とヘビみたいに長い虫コブの茎だった。長さが30㎝もあるインゲンみたい。葉の一部が膨れているものもある。

薄葉先生から、ウリウロコタマバエによる奇形で「カラスウリクキフクレフシ」と教えていただいた記憶がある。この中でタマバエの幼虫は、茎の中身を食べながら育つらしい。このタマバエの成虫の姿も産卵のタイミングも、育つまでの経過も全然知らないのが残念無念。

たぶん、若い新芽の近くに産卵する。すると対抗手段でカラスウリは成長ホルモンを過剰に分泌する。そしてこの異常に長い茎が出来上がってしまったということなのだろう。

接触抑止という言葉もあるらしいのです。つまり切り傷などで皮膚が損傷されると、傷口を治すために周辺から新しい細胞が増えてきて、傷口をふさぐ。でも、周辺の細胞はもとの状態を記憶していて、それ以上に膨らみ続けてまで細胞分裂を続けることはしない。でも、この茎は途方もなく長くなって、収拾がつかなくなってしまったみたい。数か所に枯れこんだツルの痕跡が見られました。絵を描きながら、そんなことを考えたのでした。 



# by midori-kai | 2018-11-01 15:21
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市川市の山林所有者が集まり、自然景観【里山緑地】を守る会です。地球温暖化や樹林地とのつながりを考えています。


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