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 山崎先生が自然環境グループの活動記録まとめる  高 野 史 郎

今年の1月は殆ど雨が降らないで、乾燥しきった期間が長く続いた。大地に植えられたものは根も深く延び、何とか水分を吸収する方法も取れるだろうが、プランターなどに植えられたものは、すっかり乾ききっていた。夏の季節なら葉がしおれてしまうからすぐに気がつくが、冬に水やりする人は少ないようだ。あちこちで、寒さと乾燥とで枯れかかっている植物たちを見つけた。

2月早々になって、やっと少しはまとまった雨が降る兆しが出てきた。ロウバイ、サンシュユ、ウメなどが咲き出している。

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                              (枝垂れ紅梅/市川市大町にて)

すると今年のサクラいつ咲くの?という質問がでてくる。お花見の行事に関係してくると、年度末の3月に咲くか、4月にずれ込むかが重大問題だ。

この15年ほど、市川各地のソメイヨシノの咲き始めを記録し続けているが、2013年の3月18日に咲き出したのが一番早かった。さて今年は、どうなるのだろう?

気象庁のデーターでは毎年の変動が大きいから、30年間の平均で発表されている。それによるとソメイヨシノの開花は、東京で3月26日が咲き始め、4月3日が満開となっている。さて、あなたの周りのソメイヨシノが咲き始めるのはいつなのか調べて欲しい。

ところで、市川学園で長年教鞭をとられていた山崎秀雄先生が、大変な資料をまとめられたのをご存知だろうか? 市川市には自然環境系の専門家が大勢いらっしゃる。その活動の一つが市川市自然環境研究グループで、1971年12月に立ち上げられ、代表が岩瀬徹先生、事務局には石井信義先生が担当されていた。その40年ほどの活動記録が、山崎先生の編著という形で昨年末に発行されたので、ぜひ図書館などで手にとって熟読していただきたいと思う。

1960年代から、市川南部の埋立地などでは地下水の汲み上げなどによる地盤沈下が深刻だった。高度成長期に自然破壊が進む中で、大町の長田谷津に公園を作る話が持ち上がった。谷津田は水には恵まれているものの、湧き水は水温が低く、日当たりも時間が限られるから平田よりも収穫量が落ちる。減反政策の候補になりやすい条件が揃っている。当初は、サイクリング道路の建設や自転車の乗り入れなどの計画もあったらしい。

1978(昭和53)年には、当時の髙橋国雄市長宛に市川市自然教育園(付、自然博物園)構想案を提出している。膨大な資料を整理しての200ページにも及ぶ活動記録から、ほんの一部分だけを紹介させていただこう。

◆市川市は自然と文化の香り豊かな街といわれてきた。市川市内外には自然研究者や愛好家が多数在住や勤務しており、活発な活動を続けていてその蓄積も大きい。

◆すでに歴史・考古学関係では博物館があるが、自然関係には及んでいない。博物館単独の施設ではなく、野外観察地域を含めた自然教育園的な総合施設が望ましい。

◆さらに将来、新浜の野鳥保護地域、江戸川河川敷などを含めたネットワークが出来れば、現代的命題である環境教育の場として市民の要望にこたえることできるし、新しいまちづくりの試みとして先鞭をつけることが出来よう・・・。

これらの計画書は、自然関係の各分野の専門家が長期間にわたって実態調査の報告と、建物の大きさや展示テーマの一覧表など、詳細を極めている。

本の前半は、行政などへの働きかけ、要望書などの収録、行動の記録など。市川自然展の第1回は、1979年8月に当時の市川市社会教育会館(今の市川公民館)で開催されている。

第Ⅱ部では、自然環境講座の抜粋など。この第1回は、岩瀬徹先生の「雑草の暮らしと人間」、第2回は「市川の緑地の特徴」石井信義先生、そして第6回には「市川の干潟と海の生物」風呂田利夫先生、第11回には「市川市の地形」杉原茂夫先生と続く。30回を迎えた自然講座では、沼田眞先生を迎えての記念講演も開かれた。

これらの集まりの際に配布された資料が復元されて掲載されているので、今となっては貴重なデーターとなっている。

ユニークなのは、山崎先生が「どうしても伝えたいこと:(謄写印刷・温故知新)」で当時の印刷の苦労話を紹介されていること。若い人たちには想像もつかない面倒な作業が続けられて講座資料などが作られていたのである。青焼き・鉄筆・ヤスリ板などの道具の紹介。版下つくりには鋏とのりが必要だった時代がつい最近まであったのだ。

石井先生からバトンタッチされた岡﨑清孝さんの観察会資料の紹介もある。最後には、石井信義先生夫人の節子さんから「次世代の子供たちに貴重な自然を残したい思いから」のエッセイが載せられている。今回の著書をまとめるための資料は、石井節子さんの保存にかかわるものが多かったといわれる。

記録は、誰かが大変な苦労をしてまとめないと散逸され、不確かな記憶の断片となり、やがて忘れ去られてまた同じような過ちが繰り返されないとも限らない。

「交渉ごとは根気よくすることであるが、地方自治体のような大きな組織を動かすのは大変、交渉窓口になる担当の部長課長がその気になることが大切。担当が代わった場合には、その都度提出済みの要望書などのコピーを渡し説明をする。それと同時に、協力を惜しまないことを伝え、ともに行動して信頼関係を築くことが大切である」と山崎先生は締めくくっている。




by midori-kai | 2019-02-24 07:47
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市川市の山林所有者が集まり、自然景観【里山緑地】を守る会です。地球温暖化や樹林地とのつながりを考えています。


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