秋に咲く花、みのりの秋   高 野 史 郎

暑すぎたり、雨が降りすぎたり乾き過ぎたりと、乱高下した夏が終わってもうすっかり秋です。移り気な細かい気温の変化に気をとられることもなく、季節になると冬鳥がやってくる。ヒガンバナは昔も今も、秋のお彼岸の頃に咲いてくれるのが不思議です。

市川ではもう田んぼは殆ど見られなくなったけれど、9月末に山梨へ行った時、車窓から段々畑やハザ掛けした稲束を眺めることができました。今どき、コンバインではなく鎌で刈って、そこの田んぼで干している地域が残っているのだと、やけに懐かしい気分になったのでした。

動植物たちは日照時間で季節を先取りすることが、かなり前から知られています。空気も水も大地も、温まるのには時間がかかる。夏至は6月なのに、真夏は8月。冬至は12月末なのに、いちばん寒いのは2月になってからというように。日照時間の長短が、2か月も早く季節を先取りして生きものたちに未来予測の情報を発信していることになります。

クリスマスを飾るポインセチアは、先端に花芽ができないと葉が赤くならない。花芽分化の条件は、日照時間が12時間15分以下になることが条件という実験結果もあるというのが驚きです! 

アメリカシロヒトリを使った実験でも、暗闇時間を実際よりも短くコントロールして秋の気配を感じさせると、10日ほどで越冬準備を始めるのだそうです。気まぐれな暖かい日に油断して、季節の切り替えを先送りしてモタモタしていたら、その種類は絶滅してしまうことになってしまう。自然界のおきては、想定外だから仕方ない、などとはいっていられません。

日本では秋になって寒くなったから紅葉する、落葉樹は身軽になって間もなく来る冬に備える、と考える。でも、赤道近くの夏緑林の地域では、気温には無関係に乾季になれば落葉する、雨季がくれば新芽が伸び始めるというわけです。東南アジアでは、1年12か月の気温が30℃以上で殆ど一定という地域だってある。地球は広いんですね。

千葉県の生涯大学校などで、自然環境についての講座を持っていた時がありました。主催者側では、地球温暖化とか、外来種問題などをテーマに、判りやすく楽しく話してほしいといわれる。

ところが、最後の質問時間になると「テーマとは関係ないのですけれど、ウチの植木が元気ないのは、水遣りや肥料が足りないんでしょうか?」の質問がよく出てきたんです。

これかなりの勘違いです。野菜や花の苗の植え替えでも、雨の日に移植すれば水遣りの手間が省けると考えるのは大間違い! 苗の立場からすれば、根を切られた状態から再生復活するためには、今までよりもたくさんの酸素が必要。土の水分が多い時に土をいじると、酸欠状態を助長することになってしまう。粘土質の土では、その後で固まってヒビ割れしたりする。根が切られる。

耕耘機が耕してくれるのは、せいぜい30cmの深さです。その下の土は、空気にも触れることなく、コチコチに固まっていることでしょう。排水が悪いところでは、そこに水がたまる。多くの植物では、新鮮な酸素を求めて地表近くに根を伸ばしていることを知って欲しい。

そんな畑の状態と、最近の集中豪雨による崖崩れなどとも、つなげて考える視点が必要になってくるのでしょうね。

地上のことばっかり考えていると、土台部分は見えないだけに忘れられてしまいがち。明石海峡に作られた大きな吊橋は、全長がなんと3910mで、真ん中部分の1990mを2か所の橋脚で支えている。橋脚の下には直径80mの基礎が作られているのだそうです。地上部分にかかる経費と同じぐらいの予算が地下部分にも必要だったとか。植物だって、地上のことばっかり考えないで、その下に張り巡らされている根の存在に、もっと目を向けましょうよ!

建築現場を見ていると、間もなく植栽される予定のスペースは、竣工間際まで石ころでいっぱいだったりします。そこにほんの30cmほどの土を盛ると、それまでの工事のことなど忘れてしまう。市街地の街路樹を取り囲む事情は、林の中のフワフワの土とは違って、ひどく厳しい状況なのです。

それにつけても気がかりなのは、市街地の街路樹下に植えられたバラのこと。下草が生えないようにするためか、根元には黒いシートが敷き詰められている。あれって、地下部分への水分の流れ・新鮮な空気の循環などについて、どの程度に配慮されているのだろうかとずっと気にしています。

植物の根は、地上部分を支えるとともに、各種の微量栄養素を含んだ水を吸い上げる。そして根は常に呼吸もしている! 土の中の水分量の変化にともなって、土の隙間に新鮮な空気が出入りする。そうした事情も配慮し、いろいろなテストも踏まえて、街路樹の下にバラを植えたのでしようか?  

ここ数年来の不順な天候で、夏の時期に雨が降らない年が昔よりも増えてきています。土の中の水分奪い合い競争が激化して、大きく育っている樹木が水分を先に吸い上げれば、根の浅いツツジやアジサイに回る水分はなくなって、枯れ込んだりすることになります。

道路中央のグリーンベルトにも、バラや根の浅い1年草を植えることが増えてきている。地域的には夏の水不足も懸念される昨今、市街地のこうした場所にまで、給水車で水やりすることなんて考えられませんよね。たとえば、カラカラに乾いた土には、30㎜・50mmの降水量に相当する水が必要になるでしょう。でもたぶん、こうした場所は土も固まっていて、水が外に流れ出すわりには、土の中にはしみ込んでくれそうもない!

老齢化した巨樹などの治療にあたる樹木医さんたちは、モミガラを利用したり、節を抜いた竹筒を地面の中に差し込んだりと、根を元気付けるいろんな方法をとっています。そんな配慮も、条件の厳しい市街地の植栽の参考にして欲しい。

それに、いま植えたバラがどのくらいの大きさに育って欲しいのかのイメージを。バラにはトゲがある。歩道側の外に向かって枝が伸びては困る。剪定の時期はいつ? 多肥料を要求するバラの種類も多い中で、適正な品種の選択がされているのかな。5年後、10年後にどんな状況に育つのかの見通しがされているのか。心配が絶えません。今の環境が暮しにくい時、動物だったら逃げ出して難を逃れる可能性も時にはあるけれど、植物にはそれができないで耐えるしかないんです。見回ったところ、枯れてなくなった株も多いようす。顔色もよくない。

公園の芝生に穴をあけて、無理にバラを植え込んだところもある。芝生は年月の経過と共に、かなり密に茎や葉が茂り、雨降りの後には水溜りができるほどになる。水がしみこんでくれないのです。だからゴルフ場には、低い場所に池を配置しているくらいなのに。

樹林地は、地下から大量の水分を吸い上げ、葉裏からの蒸散作用によって、あたりの気温を下げてくれる。木陰が、さわやかなクルースポットを提供してくれる。この地球にふえ続ける二酸化炭素を吸収してくれるのも植物の大事な機能の一つ。そんな地球環境への配慮もさりげなく感じながら、空を見上げて深呼吸、爽やかな気分になりたいものです。市川市は、健康都市を宣言してのですから。



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by midori-kai | 2017-10-31 07:13
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市川市の山林所有者が集まり、自然景観【里山緑地】を守る会です。地球温暖化や樹林地とのつながりを考えています。


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