ソメイヨシノが終わったその後で   高野史郎

この春、どこかへお花見に行きましたか? 里見公園などでは今年も大変な賑わいでした。家族づれ、仲間同士で? ひと時のように、新人研修をかねて朝早くからブルーシートを敷いて、「なわばり宣言」の場所どりをするグループは激減したようです。
この理由は? 給料を支払っているのに日常の仕事をさせないで、前途ある新人に夕方まで待たせていることのアホらしさ・効率の悪さに、やっと気づいたからということかな? 組織としての結束が弱まったからか?
芝生にとっても、ブルーシートの下では何時間も窒息状態に置かれるし、重圧がかかる。つらい立場です。サクラの方だって、地際に近いところは水平に根を伸ばして、呼吸もしているんですから踏み固められるのは好ましくないに決まっている。
ここ数年、植物の根張りについて個人的には関心を深めています。かつての林業試験場などでも、精力的にこうした調査が行われ、植物の種類ごとに根の張り方のタイプの違い方からの分類が進められています。
市川市の最南端のお花見場所は、野鳥観察舎のある行徳のその先、猫実川沿いの南行徳の桜並木なのですが、ご存知の方は少ないかもしれませんね。
ソメイヨシノは堤防よりも少し下の道路側に40本ぐらいが一列に植えられています。堤防のほうは道路よりも1.5mぐらい高い。コンクリートで固められた堤防ですから、サクラの根が土手の下へ入って行き難い事情もあってか、サクラの根が斜面を這い上がっているんです。 
誰かが気がついて、「サクラの根っこも苦労が多いんだね。これだけの花を咲かせるためには、毎日相当の分量の水を吸い上げているんだよね」などという会話があってもいいと思うのに。

今年のソメイヨシノは、3月26日頃からほぼ市内全域で咲き出しました。この季節が終わると、浮かれた気分は収まってしまうのですが、今年はそれからも市内全域を殆ど毎日自転車で走り回りました。
加齢とともに、この作業がだんだんきつくなって来ました。
あちこちに、いわゆる八重桜のグループが咲きだしていたのに気がつきました。赤紫がかった濃いピンクの賑やかなのは、カンザン(関山)です。
ツボミはかなりピンクが濃いのに、開花とともに淡いピンクになるのはフゲンゾウ(普賢象)でしょう。緑色のメシベの根元が太くなっているのが普賢菩薩さん乗っている象の鼻の形に似ているとか! 昔の人は、信心深かったのでしょうね。それにしても優雅なイメージの発想に驚かされます。
黄色い花のグループには、ウコン(鬱金)とギョイコウ(御黄衣)があります。ウコンのほうは薄黄色で開花の進行とともに真ん中に赤味が差してくる。ギョイコウは一見葉っぱ色のグリーンの花で、気が付かないと見落としてしまう。花びらはちょっと分厚くて反り返っています。この花も後半は赤味を増してきます。
困ったことに、名札の違いが市内に何か所かあります。最近の研究では、この両者、DNA解析ではそっくりで、それぞれに個体変異の幅が広いそうなのです。あるいは、連続的な個体変異のグラデーションがあって、その両極端がウコンとギョイコウということになるのかもしれません。
ところがなんとか決着をつけないと気がすまないのが、日本人の性分なんでしょう。どっちです、どれがホントですか?とこっちを向いて迫ってくるんです。
アタシがサクラの立場を代弁できるはずがないんです。サクラのほうから「アタシは何色になりましょうか?」などと折いった相談があったわけではない。一人の人間が一生の間に獲得できる情報量なんてタカが知れています。世の中、途方にくれることばっかり。自分でいろんな場合を想定できないで、どうして結論だけを求めるのか、不思議だなあ!
日本人だって、みんな一人ひとり、顔も性格も違うでしょう。どっちが本物の日本人ですか? なんて誰も考えたりしませんよね。深くシズカに、自然の不思議をそれぞれが感じて、考えるしかないじゃありませんか。

4月5日の土曜日には、野鳥観察舎のある行徳の保護区に中で、「野鳥が育てたサクラ・一株ごとにみんな違う」の観察会をやりました。
午前と午後の2回、それぞれを2グループに分けて案内するほどの盛況でした。120人ぐらい来たのかな? 野鳥観察舎友の会のスタッフが中心になって、4年ほど前から保護区内の野生のサクラの調査をやっていて、写真を撮ったり標本を作ったりしています。300株ぐらいあるんです。膨大な、根気が要る作業です。
保護区がある場所は埋立地、40年ぐらいが経過しています。最初の10年ぐらいは、いわば創世記です。風が運んだりしてタネが飛んできた。運よく生き残ったものが、今に続いている。
野鳥たちはどこかでサクランボを食べた。消化するのに何時間かがかかる。トイレへ行きたくなる。そこが行徳近郊緑地の保護区だったのかも。
遺伝情報というのは、母親からの流れと父親からの流れが二つでワンセット。だから二倍体と呼ばれる。受精する時に細胞の中の染色体は減数分裂して、一旦バラバラになり、それが組み合わされて新しい命の始まりです。だから、兄弟みんな少しずつ違うように、個体差が出てくる。
同じ種類なんだから、あまり変わりすぎては困るけれど、許された範囲内でいろんなタイプを作っておかないと、環境が激変した時に共倒れになるよ!という深い思慮が自然界にはあるもののようです。
そんなことも感じ取ってもらわないと、楽しくないですよね。
花が終わると、やがて実を結ぶ。サクランボです。食用にするサクランボは、セイヨウミザクラ(西洋実桜)という種類。中国にはシナミザクラ(シナ実桜・唐実桜)があって、これが中国でいう「桜桃」です。だから、桜桃という言葉を、フツウのサクランボに当てるのは不適切なのかも。
シナミザクラは白い花です。芳澤ガーデンギャラリーにあります。真間山弘法寺の西寄り、花屋跡と茶室跡の2か所にもあります。
花屋さんがあった頃、ここの主人に「いつ買ってきて植えたんです?」と聞いたことがありました。
「佐藤錦っていう名札がついていたから買ってきたのに、小さいサクランボしかならないでがっかりした!」とのことでした。
ちょうどいま、各種サクラの小さなサクランボがなっています。甘いのと苦いのとがあります。植物には多少ともに自家不和合性という性質があって、近親繁殖を防ぐ防衛処置?を持っています。ちょっとだけ、よそ見して、雑種を作っていこうという考えのようです。(動物ではこの話、聞きませんね)。
自家不和合性と、接木などの無性繁殖の説明もしておかないと、この話、混乱させてしまいそうです。それはまたいつか。
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by midori-kai | 2014-04-17 12:55
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市川市の山林所有者が集まり、自然景観【里山緑地】を守る会です。地球温暖化や樹林地とのつながりを考えています。


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