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第150回5月(皐月)カザグルマの生活史

 カザグルマの白い花、見たことありますよね。5月中旬に白や薄紫の花を咲かせるクレマチスの仲間です。一昨年の6月にアンデルセン公園で挿し木の方法などの講習会が開かれ、それに参加してから2年間の記録をご紹介しましょう。

  講師はクレマチスにも詳しい園芸研究家の大先生です。新芽の成長が一段落した梅雨時が、多くの植物にとっての挿し木の始まり。

  クレマチスの挿し穂は、花が終わった後などの若くて充実した茎を2節分切って使い、何回か植え替えて、今はもう1mにも育っています。持ち帰った挿し穂は3つ分でした。ところがこの3本は、それぞれ全く別の運命をたどったのです!

  発根には意外に日数がかかり、3カ月間ぐらいだった感じ。9月頃にはそれぞれが新芽を四方に広げて育ち始めた。なのに秋には茶色に枯れこんでしまったのが一株。もう一株はけっこう元気よかったのに、翌年春には元気がなくなって、何故かこれもついに枯れた! 3年目を迎えてツボミをたくさんつけてるのは1株になってしまった。

  同じように注意深く育てたはずなのにです。ここで、三つの立場から「挿し木したのにつかなかった」という人

「意外に簡単に元気よく育った」というか、立場も変わるわけですね。

  大昔の学生時代に、サンプル数が少ないのにそういう結論を出すのは思い上がりだ!とこっぴどく叱られた記憶がよみがえってきました。昔の教授は怖かった!今も身に染みています、30分間直立不動でそれに耐えたんですから。研究室のメンバーは「無事に帰って来て良かったな」と慰めてくれた。

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  それにしても植物って不思議です。何の準備も仕掛けもないように見えて、条件が整えば根が出て、新芽が伸びて1人前の植物に育ってゆくのですから。分化全能性などというらしい。動物では考えにくい魔力の持ち主なんですね。

  イラストの左下は、短く切った3本を挿した状態。その上の茶色なカカシみたいに左右に突っ張っているのが、早く枯れて軸だけになった形。その横は四方に広がった新芽の形。念のために満開状態の白い花の写真と、花が散った後に毛がいっぱいつけた実の形と。この2年間に10枚ぐらい描いたイラストからの組合せです。

 農家の人たちは、毎日のように作物の育つ具合を見に畑に通うという。市街地で暮らす人も、朝夕の風の動きや植物たちの顔色を眺め、自然の底力に感謝すればいいのにナ。

  分類では、キンポウゲ科のセンニンソウ属、クサボタン、ハンショウヅル、ボタンヅルなどが、みんなクレマチス属の仲間ということです。

 



# by midori-kai | 2023-05-03 13:51

 緑豊かな景観を大切に  高 野 史 郎

 今年の春は早かった。桜はもうとっくに散って葉桜に、早くも来年に向けての準備に取りかかっている。例年ならば5月になって咲く筈だった植物たちが、4月に咲いてしまった。いつものつもりで東北の桜の巨樹を見に行ったら、とっくに満開を過ぎていたという話も聞いた。ゴールデンウイークにいつもは咲いていたフジが、軒並みに4月下旬に咲いてしまった。

  この季節は、自然を求めて散歩を始めるのに一番いい季節だと、昔教えられた。冬を越した常緑樹のしっかりとした葉と、生まれたての新緑の対比がすばらしい。

  自然観察での歩くスピードは、時速3キロぐらいの感じで。下り坂になると子ども達が駆けだしてしまうから、ゆったりとした上り坂がいいとも。時折たち止まって、空を見上げよう。風が吹いているのを感じる。

  40年前に始められた自然保護協会の指導員養成の講習会で、最初の実技では林が見える場所に立って、全体の風景をスケッチすることから始めた。絵を描き終わったら、林の中に入ってもらう。

  林縁にはソデ群落・マント群落があるが、中に入って見ると意外に明るいのに気づく。植物たちは太陽の光を求めて先に伸びていくから、林の中は意外に明るいのだ。(いわゆるジャングルのイメージは、現実離れした幻想だったのを体感する)。

  そのあとで、底のないプラスチックの円筒形を土の中に押し込むようにして、準備した水を注ぎこむ。何カ所かでやってみると、土のふわふわ度によって、しみ込むのに時間差があるのに気づく。

  (まだ一度も試したことないのだが、男の子にオシッコをさせてみたら面白いのに、という衝動に駆られている。水が土の中にしみこまず、表面に流れ出して靴がぬれてしまったら、水がすぐにしみこめば有機物を含んだ柔らかい土なんだ!)

  WS・ギルピンが森林風景論を出版したのは1791年だったか。その後、日本では北大で森林美学の講座が持たれたという。

  広い農学の分野の中で、美的な追及がされたのは、樹木を対象とした林学の領域だけのように思われるがどうだろう。樹木は人の生涯を基準にした時、比較にならないほどに長く、そして巨大なのだ。

  国立公園の場合を考えてみよう。よく知られているように、1872年(明治5年)に探検隊が道に迷って、偶然にも30mもの間欠泉が噴き出すのを発見したのが、アメリカ・イエローストーン国立公園の始まりといわれる。

  森林伐採し焼き畑農業で開拓し続けてきたことの反省もあったのだろう。日本では史跡名勝天然記念物保存法が制定されたのが1919年のこと。

  残念ながら当時の日本には、自然を大切にという考えが広くあったわけではなさそうだ。外遊から帰って来た人たちが、燃えない家と芝生のテニスコートの素晴らしさを広めたのだという。この時代、二酸化炭素の増加や地球温暖化が喫緊の課題になるなどとは、全く考えもしなかったと思われる。

  自然公園法の文章ご存じ? 第1条に「・・・すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の促進を図り、もって国民の保健、休養及び教化に資する」となって、いわば両天秤の空中ブランコ。環境省ができるずっと前は、国立公園などは厚生省の体力局が所管していた――

  植物は水と二酸化炭素を材料にして光合成する・・・ことは小学生でもみんな知ってる。環境整備というと、邪魔者を伐採することになってしまうのはおかしい。景観を考えるというと、定規とスケールを持ち出すのは変ですねエ。自然は直線を好まず、変幻自在でバライティーに満ちている。みどりの無限なほどのグラデーション。

  増え続ける二酸化炭素を吸収してくれるのは、植物たちだけなのに。

 



# by midori-kai | 2023-05-03 13:47

第149回4月(卯月)市川のサクラ*咲き始めグラフ

イラストの説明》 市川のサクラ*咲き始めグラフ

  古い資料を整理していると、忘れかけたものもたくさん出てきます。このグラフもその一つ。 最近はマスコミでもサクラの開花情報が発表されるから皆さんよ~くご存じ。ソメイヨシノの場合は、九段の靖国神社の標準木が56輪咲いた段階で開花宣言することになっています。

 サクラの品種はたくさんあるし、市川の場合はどうなんだろ。2007年から調べまわることにして、8年間ほど自転車で走り回ってグラフ化したのがこれです。 

 このグラフを見て、あなただったら直感的にどんな事思い浮かべます? そそっかしい方はすぐに「地球温暖化の兆候が見られる」、などとおっしゃる! 

 ちょっと待ってください。春の頃は三寒四温、何日かごとに寒い日と暖かい日がせめぎあいながらやって来る。生きものたちはそんな微妙な環境の中で、的確に自分たちに必要な情報を選び出して、その先の行動へとつなげているんですから。

第149回4月(卯月)市川のサクラ*咲き始めグラフ_b0199122_13442888.jpg

 何日に咲いたと数字で表現するとなると、毎日走り回らないといけませんね。このグラフを作るにあたっては、ざっと1000回ぐらい走り回った結果なんです。時には早朝と夕方の2回も。

 たとえば大柏川沿いでは、上流と下流では1日以上の開花のずれがある。 気温の違いなのか樹齢などの違いか? エドヒガンは市川市内に2株しかなかった。シダレザクラでは、真間山弘法寺の伏姫桜と原木の妙行寺のとでは、枝ぶりも開花の時期も微妙に違う。

 動植物園駐車場に並ぶカワヅザクラでは、何番目の株が早く咲いたと思ったら翌年は違っていた、などなど。栽培品種でも数年間継続観察しないと、間違った判断を下してしまう恐れがあるんです。

 カワヅザクラのグラフを見ると、年によって1カ月近い開花時期の違いがありますね。いわゆる八重桜、里桜からは茶色っぽい新芽が目立つ、ボタン色の花の関山(カンザン)をグラフにしています。この花あたりが市川周辺で咲く桜の終わりでしょうか。

 こうしたグラフから温暖化の推移を確かめるためには、3050年単位の慎重なデーターが必要になってくることでしょう。

 人間世界では3月で担当者が変わることがしばしばあります。議会などに立候補する方々も、そんな気の長いことは票と無関係。その辺が環境問題のむづかしさのようですね。

 こどもエコクラブの活動も、1年間やって、成績が上がるわけではないし、それを校長に説明するのが難しいと担当者はいう。もっと気の長い先まで考える視点が望ましいのにです。



# by midori-kai | 2023-04-03 13:44

緑の景観と地球温暖化のことなど    高 野 史 郎

 ソメイヨシノの開花宣言、昔は入学式の頃だったのに、いつの間にか卒業式の日になった。季節は行ったり来たりしながら移り変わっていく。でも人間社会では3月が区切りだ。ここで人事異動があったりするから、桜祭りは3月までの担当者がするのか、新年度の役員の仕事か困ってしまう。

 今年の真間川堤桜ウイークは、318日から49日の日曜日となっている。4月上旬には、もう葉桜になってしまうかもしれない。この頃を担当する立場になったら、なんて解説するんだろう? 「今年の咲いた花は、去年の秋までに準備してきたお蔭なんですよ。 いまはもう新しい葉を広げて、すぐに来年の準備にとりかかるんです」って言えるかな?

 街の人は気まぐれ。よく聞かれる文句の数々。「サクラの花がいいのは1週間だけね。毛虫が出てくるし、うっとうしいし、春だけ元気ならいいのに」。

 市議会記録で、アタマにきちゃった記事がありました。「市川市なにもない問題。他の市のような評判のいいマスコットキャラクターがない、何とかなりませんか?」(市議会便り202158日発行248号)。自分で市内あちこち歩き回って、調べて考えて、その先に進めればいいんですよね。

 生きもの世界では、毎日のように揺れ動く気温を指標にするのではなく、日照時間で判断しているという。春の季節は忙しいが、秋だって冬越しのタイミングを間違えればその種の絶滅が絡んでくるのだ。

 日が短かくなる冬至よりも一番寒い日は2月だし、反対に夏至は6月なのに夏の盛りは8月だ。日照時間を指標にすれば、2カ月も早く季節の予測し、それに準じた次の行動につなげていくことができる!市川名産のナシも真夏の高温が続くと、ヤケド状態になって、商品価値がなくなるのだそうだ。

 3月末に大町の梨街道を歩いた。花が咲くのは晩生の種類が先というから、早く咲くのは新高の花かな? もうすっかり満開の季節になっていた。

 それにしても、今年の春は例年よりずっと早かった。カイドウはいつも4月上旬に咲きだしていたのに、今年は3月末だった。こんな身近な所にもじわじわと、地球の温暖化が忍び寄ってきている。

 コロナ禍はうまく終結したわけではないけれど、あきらめもあって世の中が動き出した。お祭りも復活してきたが

自粛要請で自宅に引きこもりの人も多かったはず。

 気がかりなのは、野外へ出て自然に親しんだりする心の余裕をなくしてしまったこと。子どもの数が減ったこともあって、道路や広場で元気に騒ぐ姿がなくなってる。ガキ大将もいない。大人の方もすぐにうるさいと文句を言う。これって大変なことなのに。

 津田沼駅近くの銀行の入り口、ひさしが出っ張っているから雨水も無縁な場所。ヒマワリ、パンジー、ツタ、何を植えても干からびて次つぎと枯れてしまう。遂に人工芝に変わった。緑色は保たれているが、もちろん光合成はしてくれない。ゼロカーボンとも、まったく関係ない。

 どうもおかしいのは、環境整備という言葉。邪魔者は取り除いてさっぱりしようという考え。それがしばしば樹木がうっとうしいということにつながる風潮。まわりの樹木が何ともカッコ悪く切断されて、見るも哀れな風景が激増している。

 どのくらいの大きさにしたらバランスがいい? 新芽はどっちに伸びるんだろう? この木は何月頃に来年の花芽の準備を始めるのかな? などと考えてほしいのにナ。

 子どもたちは今学校で、SDGsを習っています。図書館には関連した本がたくさん並んでいる。この地球の温暖化問題については、225日に行徳のI&Iホールで地球温暖化についての平田仁子さんの講演会があり、市川市の田中市長や千葉商大の学長、関係する市民グループなど大勢が参加された。

 春は雑木林もそれぞれの色どりで新芽が展開していく。樹木の種類によって緑の色も形も全部違う、豊たかな多様性が見られる絶好のチャンスなんです。

 市街化が加速する市川だけれど、まだ自然の緑が多少は残されている。生態系の中で植物の緑は「生産者」なんです。動物は自分でCO と水を原料にして光合成などできないんだから。

 CO2を減らす魔力を持っている樹林地を、もっと大事に守り育てていきましょうよ。いつまでも暢気に構えている時代ではないんです!

 「この木なんていう名前?」「デカい木だな、樹齢はどのくらい?」「何種類ぐらい木の名前を覚えたら専門家になるんですか?」 どうもおかしいですねエ。個別にではなく、緑の樹林地を、緑の景観をもっと大事に!

 



# by midori-kai | 2023-04-03 13:13

第148回3月(花見月)スギの落枝

  2月上旬に、我が家から30分ほどの市民の森で拾ったスギの枯れ枝。茶色のものや緑のものなど。しばらく流しの前に飾って置いたら、薄茶色の雄花序から大量の花粉が落ちて、台所の流しが薄黄色の花粉だらけになっているのに慌てた。

第148回3月(花見月)スギの落枝_b0199122_18220732.jpg


        《1日3~4時間、完成まで10日を要したそうです。緻密な絵をご鑑賞ください。》

  裸子植物としては、イチョウやソテツ、そしてクロマツなどはずいぶんと絵を描いてきたが、スギをまじかに眺めて絵を描くこともしなかったのは迂闊だった。

  ところで、市川でスギが生えていて、手の届く高さで花粉の出方を確かめられる状態になっているのはどこだろう。そういう視点でスギの分布を調べたことも、裸子植物の生活史を調べたこともなかった。

  虫媒花の植物が昆虫たちを呼び込むために共進化した歴史は、多くの人に良く知られているが、風媒花はみんなに嫌われ邪魔者扱いされているのは差別発言だ! 屋久島の大王スギは樹齢3000年、縄文杉は2170年と最近の研究ではいわれている。

  本棚から古い資料を引きずり出す。昭和54年(1979)に当時の千葉県林務課から発行された「山武林業」が出てきて読みふける。挿し穂の寸法などが8寸から1尺などと書かれているのに驚いた。銚子へ向かう途中の日向駅から歩いて、昔の林業試験場に行っていたこなども今は懐かしい。

  スギの仲間、日本海側の積雪が多い地域では下枝が雪に押されて地面につき、そこから発根する。アシウスギ(ウラスギ)とよばれ、変種として扱われている。

  それにしてもこの大量の花粉! 市街地の多い市川では、風の流れに乗っての行く先にパートナーの雌花などが待っているはずもないわけだ。けっこう長い時間をかけて枯れはてたスギの枝先を見つけ続けてイラストを描きながら、ちょっとはうら寂しい気分になったりもする春である。



# by midori-kai | 2023-03-07 12:51
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市川市の山林所有者が集まり、自然景観【里山緑地】を守る会です。地球温暖化や樹林地とのつながりを考えています。


by midori-kai
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